いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「本当に大丈夫だよ。図書館で借りた本も読みたいから」
鞄の中から分厚い本を取り出す。
今公開中の洋画の原作を翻訳したもの。
予約しておいてようやく借りることが出来たのだ。
「難しそうな本読んでるんだな」
「律くんも読んでみる?」
「ムリムリ!きっと1ページでギブだよ」
薦めてみたものの思った通りの言葉が返ってきて、あたしは笑いながら提案してみる。
「今これ映画が公開中なの。……もし……よかったら、今度一緒に見に行かない……?」
「あはっ、それならOK!」
どきどきしながらの誘いに、律くんは八重歯をのぞかせながら応えてくれた。
……断られなくて良かった……。
律くんを待っている2時間は、練習を見るだけじゃなく本を読んだり課題をやったりと、有意義に過ごしてる。
家よりも集中できるし、あたしにとっても都合がいい。
だから、ここにいることは全然苦じゃないんだ。
「じゃあ、行ってくるな!」
「うん。練習頑張って」
もう一度頭の上に手を乗せてくれた律くんは、キラキラした笑顔で教室を出て行った。
律くんは完璧な彼氏。
何の不満も、ない――。