いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
秘密の共有
「……っしょっ……!」
日直のあたしは今、黒板と格闘している。
チョークの文字を消したいのに、どうしても届かないの……!
いま授業が終わった数学の先生は身長が185センチもあるらしく、板書も当然自分が手を伸ばした位置からスタートする。
つまり黒板の最上段、というわけで。
後ろの人にとっては見やすくて好都合なそれも、消すとなるとそれは大変な作業。
消す人のことも考えて欲しいな。
背伸びのしすぎで、ふくらはぎなんてもうプルプルしてる。
……と、黒板消しが奪われ、見上げていた文字がサッと消えた。
「なにもこんな高いとこに書かなくてもいいよなあ」
あたしの真横に真っ直ぐ伸びたその腕の正体は…………律くん。
ひょいひょいっ、となんてことなさそうに消していく。
黒板消しを握るその手には、もう見慣れたリング。
「男子だって場合によってはきついぞこれ。なあ」
くるくると腕を動かしながら下げられた視線に。
「……うん」
うなずくあたしは上手に笑えていたかな……。