いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



「そんな……」


「ここならいいだろ。待ってる間好きな本読み放題だぜ?」


「……」



こんな状態で本なんか読めるわけないじゃん。

むしろ、トラウマで本が嫌いになっちゃうよ……。



再び体を倒した黒崎くんは、それっきり起き上がることはなかった。



……なによ。

どういうつもり……?



不信感を拭えないまま、とりあえずそこから遠い席に、本を1冊選んで座る。

到底文章なんて頭に入ってこない。


ここはグラウンドから少し離れているから、教室で待っている時のように賑やかな声は届かない。

本を読むには絶好の静けさも、ただ焦りを募らせるだけ。



カチ、カチ、カチ……。

壁に掛けられた時計の秒針が、確実に時を刻んでいると教えあたしの緊張を煽る。


早く部活が終わって欲しい気持ちと終わって欲しくない気持ち。

結局本なんて読めず、時計ばかりを眺めて過ごしていると。



キーンコーンカーンコーン……


やがて6時を告げるチャイムが校内に鳴り響く。



……部活が終わった。

< 150 / 389 >

この作品をシェア

pagetop