いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


しばらく待ってみても黒崎くんが起き上がる気配はない。

どうすればいいんだろうと思い、姿の見える位置まで移動してみると。



「……はあ……」



スースー……と腹部が規則正しく上下していた。


……熟睡中ですか。

人をこんなに緊張させておいてよく寝てられるね……と思いながら近寄ると。


少し開いた窓からサーッと風が吹き、瞑っている目に掛かった前髪がさらりと揺れた。


トクンッ……。


髪の毛が風になびかれるままの無防備な寝顔には、いつもの不機嫌な面影はなく。

それぞれのパーツが存在感を放っている端正な顔立ちは、ここだけ切り取れば育ちのいい秀才そのもの。


ドクンッ、ドクンッ。


西日を避けるように顔の上に乗せた腕に目をやれば、鍛え上げられているのか筋が浮き上がっていて。

着やせするタイプなのか細身に見える体も、広く解禁したシャツから覗くその胸板が実はとても厚いことをあたしは知っている。

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