いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



そこまで言われて見ないという選択肢は、好奇心や怖いモノ見たさというというものを兼ね備えている人間には、ない。



「……ここまで来て、そんなこと言うのズルい」



怖い。怖いけど。

今更、引き返せないよ……。


文句めいた言葉を投げながらもその決意をにじませると。

ふっ……と軽く呼吸を整えたような黒崎くんの息遣いを背中越しに感じて。

そのまま歩きだした彼にあたしはついて行った。


黒崎くんが足を止めたのは、4階西側のフロアだった。

西日のせいで廊下は真っ赤に染まっている。


ここには自習室と呼ばれる部屋が10部屋ほどあり、まるで自分の部屋にいるような感覚で勉強が出来るらしい。


8畳くらいの部屋にテーブルやソファが置かれ、リラックスしながら勉強に励めることが人気で、夏休みや受験間際は予約しないと使えないんだとか。

高校見学の時に見てすごいなぁと思ったのを思い出す。


今日は誰も利用者がいないのか、このフロアからは物音ひとつしない。

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