いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



こんなところに連れて来てどうするの……?

と、黒崎くんがある一室を顎で示した。


そこは【401】とプレートの掛けられた部屋。


まるでそこへ行けとでも言う態度に、「ここ?」とクチパクで返したあと、そっと近づいてみる。


扉には小さいガラス窓がついてるから中の様子が見えるみたい。


そのままそっとそっと近づいて……ようやく中の空間が視界に入った。

そこはこじんまりとした自分の部屋みたいな作りで……。


あ。


誰もいないと思っていたその部屋の中で、男女がソファに身を沈めて抱き合っていた。



「っ……」



思わず声が漏れそうになって口元を抑える。

こんなとこでなにをっ!?


早鐘を打ち出した鼓動を感じながらも視線は釘付けになった。


長い黒髪。

白いブラウスと淡いブルーのスカート。

相手の背中にしっかり回した白くて細い腕。


どこかで見覚えのあるそのシルエットは、髪の隙間からほんの少し見えた輪郭で明確になった。

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