いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。

魔法が解ける寸前





「……ただいま」



完全に涙を乾かしてから家に入る。



「おかえりなさい。勉強はかどったー?」



今日あたしが塾を休んだ表向きの理由は、学校での勉強会。

でなきゃ塾なんてサボれない。



「うん、まあね」


「ご飯すぐ食べるでしょ?」


「勉強しながらファーストフードで食べてきちゃった」



出迎えてくれたお母さんにウソをつき、そのまま2階の自分の部屋へ直行した。


食欲なんてまったくないもん……。



部屋に入っても電気をつける気力すらなく制服のままベッドに潜り込んだ。



……ああもう、最悪。

消したくても消したくても、目を閉じれば何度もあの場面が脳裏に映る。


小野先生の背中に優しく手を回していた律くん……。

あんなにあたしを大切にしてくれて優しかった律くんのどこに、あたしを欺くなんて隙があったんだろう。


自分の彼氏に限って浮気なんてしない。

それは、ただの幸せボケに浸っていたあたしの甘さだったのかな……。

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