いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


「静かにしてっ、柏木さん寝てるから」


「……っ」



律くんがハッと息をのむのが気配で伝わる。

……小野先生がいたからだよね。


驚いたのは、恋人と周知させているあたしと、こっそりつき合っている本命の小野先生が一緒に居るから……?


もしかして、小野先生はあたしと律くんがつき合ってるって知らないとか?



「貧血みたいだから、しばらく休ませてあげて?」


「……はい」



律くんは今どんな顔をしているの?

小野先生はどんな表情をしている?

もしかして、ふたりで見つめ合ってる……?


気配はするのに会話がなくなったこの場に、律くんが来たときに目覚めたふりをすれば良かったと後悔した。



「昨日は……足を怪我したっていうのに遅くまでひきとめてごめんね」


「このくらい全然大丈夫っす」



ほら。

こんなところで聞きたくもない会話を耳に入れちゃうから。


グッと両手に力を入れて、気が緩まないようにがんばった。

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