いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
5時間目の授業が始まる直前。
「黒崎くん」
右隣に声を掛けると、耳に掛けられたチェーンピアスが微かに揺れた。
こっちは向いてくれてないけど反応があったと確信し、想いを声に乗せる。
「さっきはありがとう。保健室に運んでくれたの、黒崎くんって聞いた」
彼氏の浮気現場を見せるような人でも。
無愛想で冷たい黒崎くんにも、優しさの欠片は持っているんだと確信した。
あたしのことをただからかってただけなら、そんなことしなくてもいいもんね。
「迷惑かけてごめんね?でもうれしかった……ほんとにありがとう」
「………………べつに」
その声は、いつもと同じくそっけなかったけど。
黒崎くんの優しさにだけはウソがなかった気がして。
ほんとにうれしくて……ただそれだけが今のあたしの救いだったんだ。