いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


***


グラウンドでは律くんがランニングをしている。


部活終了時刻まではあと30分。



「…………あつい」



黒崎くんに本音をぶつけてしまった焦燥か、キスされた羞恥か。

喉はかなりカラカラで。

火照った体を冷まそうと水筒を手に取ると、その軽さにお昼に全部飲んでしまったことを思いだす。



「なにか買ってこようかな……」



鞄からお財布だけ取り出して、自販機へ向かった。


ひんやりと静かな廊下。

こんな時間に廊下をうろうろしている生徒などいなくて、昼間は聞こえない自販機のモーターの音も耳につく。


チャリン。

コインが投入される音は尚更。


自販機を眺めて……お茶のボタンを押すと、もう一度コインを投入してスポーツドリンクを買ったのは無意識だった。


「あ、……」


これから別れ話をするのに、悲しいっていう気持ちはなく。

むしろ、そんな彼のためにドリンクを買う自分に苦笑い。

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