いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



「もうこれで何度目?」


「5度目、いや6度目ですかね」


「没収しても、黒崎くんの場合まったく効き目がないみたいね」



あ。


どうやら、いつも授業中に没収されてるスマホを返却されているようだった。



黒崎くんまで小野先生となにか関係があるのかと思ったよ……。
 

ホッとして、固まっていた肩の力が抜け壁に背をつける。


ってやだ。

どうしてあたしホッとしてるんだろう……。


ついさっき、あんな強引なことされたくせに。


…………。


考えたくなくて、心を無にして壁の向こうに意識を集中させる。



「スマホ取られて困るほど依存もしてないんで」



黒崎くんがスマホをいじっているのは英語の授業中だけじゃないのに、没収という荒業に出るのは小野先生だけ。


他の先生は見て見ぬふりをしている。

生徒のひとりが理事長の息子だなんて、先生たちもやりにくいんだろうなあと察する。


冷静に反論する黒崎くんに、小野先生はいつものように毅然として返した。



「今度没収になったら、おうちの人に連絡しますから」

< 197 / 389 >

この作品をシェア

pagetop