いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



いとも簡単に見抜かれた。

それでもあたしは必死にあがく。



「ほんとになにも……」


「なにかあったんだろ?」



……どうして簡単にバレちゃうんだろう。

あたしは律くんの変化には全く気付かなかったのにね。



「俺は誰よりも美優を見てる。すこしの変化にだって気づくよ」



器用に紡がれる甘い言葉も、今はあたしの心を苦しめるだけ。

もう、いいのに……。


「言っただろ?なにかあったら俺を頼れって」


「……」


「それとも、俺には言えないこと?」



言えるわけないよ。

別れ話をするにしても、律くんの浮気を見ただなんて絶対に言わないつもりだし。


YESともNOとも答えられない質問に、律くんはYESと解釈したみたいで。

ペットボトルを机に置くと、あたしの腕を力強く引っ張り自分の胸に引き入れた。



「……!!」



いつにない強引さは、きっと律くんの心が穏やかじゃない証拠。

優しい律くんは、こんな風にあたしの腕を引っ張るなんて一度もなかった。


黒崎くんなら違和感のないそれも、今は恐怖でしかなくて……。


不安と焦りでいっぱいのなか、律くんの顎がグッと下がってきた。

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