いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。




帰り道、キスを拒否したことについて律くんは何も触れてこなかった。


さっきまでの険悪な雰囲気がウソみたいに、今日の練習中に誰がどうしたとかくだらない会話を振って。

それに返すあたしもまた、無理に笑って相槌を打って。


それでも。

隣あうあたしたちの間には、たしかに見えない距離があった。


泣きそうになったのを、なんどもなんども我慢した。




「じゃあ……ここで」


「ありがとう」



家の前まで送ってくれた律くんと別れたあと。


黒崎くんとキスした唇にそっと触れた。

そこはまだ熱を持っていて。

触れて、とてつもなく胸が苦しくなった。



「……ダメだよ、こんなの……」



律くんを責めるなんてやっぱり出来ないんだ。

劣等感があるからだとか、不器用だからじゃなく。


……芽生え始めた感情に気づかないふりをしようとしてる、そんなあたしが一番罪深いんだから。

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