いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


「さみっ、」



ファミレスってなんだってこう無駄にクーラーがガンガンなんだよ。

直にあたるその風に肩を震わせ、俺は箸を割った。


さすがに7時台のファミレスには入りたくないが、9時を過ぎれば客もまばら。

遠慮もせずに4人掛けのボックス席を陣取るのはいつものこと。

目線の先には同じようにボックス席が並んでるが、客はおらず突き当りの窓の外まで見渡せる。


口を動かしながらそのまま何気なく窓の外を見ていると。



「あ、」



駅のローターリーでバスを待つ柏木の姿を見つけた。

腕時計に目をやりながら時刻表を確認している。


柏木がここからバスに乗ることに気づいたのはつい最近。


俺を避けているのか授業の終了時間になっても帰らない柏木は、俺が食事を始めるころに姿を現す。



一口、水を飲む。



1度目のキスは、完全なる挑発だった。

……白鳥に対しての。


小野美鈴と不適切な関係にありながら、自分に忠実な柏木を騙し続けている白鳥に制裁を加えようと。

自分だけだと思っている柏木も、実は他の男の唇を知っているんだと。


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