いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



……昨日のキスは。

自分でもよくわからない。


大人しいと思っていた柏木に火をつけたのは間違いなく俺だが。


白鳥のあんな場面を見てもなお、放課後の教室で待ち続ける柏木がうっとうしく思えたのも事実。

劣等感を口にする柏木に嫌気がさしたのも事実。

俺を買いかぶり過ぎた言葉の羅列に落胆したのも事実。



『だったら器用に生きてみろよ』



最後に放った言葉は、自分自身に向けて言ったのかもな……。




うまいのかそうでもないのか分からない肉じゃがを口に放り込んで顔をあげた瞬間。


目の前に開けていたはずの外の景色が遮られていた。

誰もいなかったはずの正面に、人が座っている。


は?と、俺がとぼけた顔をしている間に"ソイツ"に店員が水を持ってくる。



「いらっしゃいませ~。ご注文がお決まりになりましたら……」


「いやっ……こいつはっ」


「チョコレートパフェ、ひとつお願いします」



ツレじゃない……そう言おうとしたところで、テーブルの隅に置かれた三角メニューを手に取り店員に示していたのは。


……さっきまでバス停にいたはずの柏木。

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