いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「……塾の帰りは、いつもここにいるみたいだから……」
「……っ、」
見られていたことに驚きを隠せず言葉に詰まると。
「このファミレス、好きなの?」
「……」
なんて天然発言する柏木に、ガックリと気が抜けた。
俺が"なに不自由なく育った器用な人間"と疑わない柏木には、俺の家に晩飯がないなんて夢にも思わないんだろう。
「まあな」
短く答えてじゃがいもを箸で転がす。
まだ湯気の立つそれは、俺がよくたのむ定番メニュー。
ご飯に味噌汁にサラダがつき、腹もちがよくて栄養価も高い。
たしかにこのファミレスが好きかと聞かれたら、否定はしない。
「あっ、肉じゃが定食?おいしそう」
おしぼりで手を拭きながら人の食事を覗き込む仕草には、いつかのように俺を警戒している様子は微塵も感じられない。
「でも、黒崎くんが食べてるのはちょっと意外」
「……俺が肉じゃが食ってたらいけねえのかよ」
ムッとした。