いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



グラスからはみ出そうな生クリームを、丁寧に掬って口へ運ぶ。


ふっ、幸せそうな顔しやがって。

こんな時間に食べたら太りそうなものの、そんな心配は柏木には無用らしい。


スプーンを握るその白くて細い腕は、強く握ったら折れそうだ。

抱きしめたあの夜……あまりの細さに壊れるんじゃないかと思った。


思い出して、胸がドクンと音を立てた。



地味だけど、決して不細工ではない。

華はないが、純粋さは滲み出ている。



「……っ」



って俺、なに考えてんだよ。

柏木ごときに翻弄されてる自分に笑える。



「夕飯がそれなのか?」



黙って食われたら視線が外せなさそうで、取り留めのない話をぶつけた。



「塾に来る前に軽く済ませてきたの」


「……あっそ」


「勉強したら糖分欲しくなっちゃうんだよね」


「……へー」


「だから鞄にはいつもチョコを入れてるの」


「……んー」

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