いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「だから……律くんが浮気したのだって、仕方ないと思ってる」
柏木は物憂げに、再びスプーンを手に取りグラスの中をかきまわす。
溶け始めたアイスが生クリームと合わさっていく。
「…………ちげぇよ」
今までの俺だったら、そんなの劣等感の塊から生まれる言葉だと蹴散らしていただろう。
でも今は。
自分の弱さを認められる柏木の、強さゆえの言葉に聞こえたから。
「浮気した白鳥が悪いに決まってる」
「えっ……」
だからこそ、無性に腹が立ったんだ。
柏木に抱いていた苛立ちなんて泡のように消えて。
こんなにまで純粋に想う柏木を裏切った白鳥への憎悪だけが増殖した。
「そんなヤツ、許すなよ」
こんな言葉が自分の口から出るなんて……驚きだ。
「……黒崎くんにそんな風に言われたら、どうしていいかわからないよ。また罵られるかと思ってたのに」
困ったように笑う柏木。
普通ならイラッとしそうなそれも、今はありがたかったりする。
らしくないセリフの後処理を、どうしたらいいのか分からなかったのは他でもない俺だから。
「……んだよ。俺ってどんだけ根性腐ってると思われてるわけ」