いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



父さんは俺に、世の中に影響力を持つ家系との政略結婚を望んでいる。

誰にも文句を言わせず俺に病院を継がせる為、そして繁栄させるために……。


はい、と答えるべきなのは分かっている……が。



「……そういうのは、間に合っています」



なぜか一瞬、さっきまで一緒にいた柏木が頭に浮かんだ。

自分の殻を破り弱さを吐き出した柏木が。


勇気を、もらったのかもしれない。



「底辺の女などにうつつを抜かしているとロクなことにならんぞ」



思った通り父さんの目の色が変わる。



「…………っ、」



体中からどっと汗が噴き出してくる。

そのくせ、体内の水分がなくなるほどに喉が乾く。

ゴクリと飲み込む唾もないほどに。



「あいつの二の舞だけはごめんだ」



そう言った父さんは、グラスの中身を一気に煽る。


カランッ……

残った氷の音が、俺の記憶を呼び起こさせた。




あいつ……。


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