いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



几帳面だった性格の表れか、どの箇所も綺麗に整理されていて、本棚には沢山の難しそうな書物。



「こんなに勉強したのにな……」



手にとって、虚しくなる。



華々しく医者になったはずの兄さんの人生は、取り巻く環境によって闇に落とされて行った。


優しかった兄さんは、派閥、嫉妬……様々な人間関係や軋轢に苦しみ、病院をやめたいとまで思うようになっていたらしい。


俺が見ていたのは兄さんの表面だけだった。

苦しんでるなんて知らずに。


優しい兄さんだったからこそ悩んでしまったんだろう。


そんな時、唯一の救いだった彼女にまで去られて。


……兄さんが死んだのは彼女と別れたすぐ後だった。


その後、こうして部屋に居た俺は兄さんの日記を見つけてしまった。

青い表紙の日記。


そこには彼女と別れた苦悩がつづられていた。


だったら……その女が兄さんを殺したも同然だ……っ。



胸が苦しくて途中で読めなくなった日記。

日を改めて部屋に入った時には、それは処分されたのか忽然となくなっていた。

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