いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



死んだ兄さんを、父さんは切り捨てるように罵倒した。

自分の分身のように手塩に掛けたのに裏切られたと思ったのだろうか。


……裏切ったのは父さんだ。


政略結婚のために兄さんの彼女に裏で手を回し、札束を押し付けて別れさせるなんて卑劣なことして。


兄さんの死は。

医者になっても尚、父さんが兄さんを気に掛けてくれてさえいたら防げた悲劇だったかもしれない。


そのとき初めて知ったんだ。

父さんに期待されていて羨ましかった兄さんも、実は孤独だったんだ、と。



「……ちくしょうっ……!!!」



思い返せば悔しさがこみ上げる。


拳をベッドに叩きつけた。



なのに。

いつまでたっても父さんは変わらない。

兄さんと違い図太い父さんは、兄さんが死んでもなお俺に同じ強要を課そうとしている。


兄さんの死は全く意味を持たなかったのか?

同じ歴史が繰り返されるだけだと思わないのか……?

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