いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
……無言が続く。
ふたりきりの教室で、一番後ろの席に並んで座るあたし達。
会話のないこの空間は、まるで切り取られた絵の中のよう。
そのなかで、窓ガラスを通して温まった空気だけがゆったり流れている。
いつだっけ……
黒崎くんとなら、会話がなくても楽だと感じたのは。
今日もそう。
緊張しているのになぜか心地よくて。
このまま時が止まればいいな、なんて思える瞬間がほんとにあるなんて……。
グラウンドの喧騒さえもどこか遠くに聞こえてくる。
その声は、そんな空気の中に突然割り込んできた。
「悪かったよ」
……えっ。
右側に顔を振る。
「アンタに見せたこと」
「……」
わずかに後悔を含んだその声は、あたしに浮気現場を見せたことかもしれない……。
……そんな風に思ってくれてたこと、知らなかった。
「……いいの。知らないでいるより、知れて良かった……」