いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
あのときはひどい、そう思ったけど。
このまま何も知らずに過ごす自分を想像しても、そこにはみじめな自分しかいないから。
「……そうか」
自分の弱さを見つめ直すきっかけにもなった。
自分の弱さを口にもできた。
これで良かったんだって思えたのも、一歩踏み出せたからなのかもしれない。
小さく呟いた黒崎くんは、声色を強くする。
「アンタってさ、俺んちのこと知ってんの?」
問いかけられて横を向けばその顔は正面を向いたままで。
あたしも正面に顔を戻し、答えた。
「……うん、少しだけ。お父さんが明應高校の理事長とか、大学病院の医院長とか……黒崎くんがその病院の跡───」
「それだけ知ってりゃ十分だな」
跡取りって言おうとして遮られた。
う……。
万葉ちゃんから聞いたことをベラベラ口にしすぎちゃったかも。
ひそかに反省していると。
「じゃあ、兄さんがいたのも知ってんだろ」
「……うん」
「死んだのも」
「…………うん。……事故、だったんでしょ……?」