いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「えっ……知って……いた……?」
ハッと顔をあげて反芻したあたしは、さっきとは違う色の瞳にゾクリと背中を震わせた。
さっきまでの怒りや悲しみとは、またべつの種類の。
一点を見つめるその瞳は、ここじゃないなにかずっと遠くを映しているように……。
「俺は……父さんが彼女に金を渡すところを見たんだ……」
「……っ、」
「俺さえ本当のことを言っていればっ……兄さんは死なずに済んだかもしれない……っ……」
「……」
「男なんて出来てねえって言ってれば……っ……!!!」
瞳が映し出す色は……後悔だ。
一番の苦悩は……お兄さんにほんとのことを伝えられなかったこと……?
黒崎くんは……。
どれほどの想いを抱えて今まで過ごしてきたの……?
あたしは今まで黒崎くんのなにを見てきたんだろう。
黒崎くんを好きだと思っていたあたしは……彼を全然知らなかった。
「でも、もっと許せないのはあいつだ」
黒崎くんは鋭く尖らせた瞳をキッと上げた。
「あいつ……?」