いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
それからしばらくして。
体を離したのは黒崎くんからだった。
「……わりい」
力なく呟いて、温もりが遠ざかる。
その途中……右腕の一部分が青くなりかけているのに気づいた。
「ちょっと待って」
その腕をつかむ。
これは律くんとの接触で負ったケガ。
打ち身って、あとからじわじわ痛くなるんだよね。
きっとものすごく痛いはず。
その痛みは今自分の体を持って感じてるからこそ分かること。
あたしはその腕をつかんだまま、律くんからもらった湿布を鞄から取り出す。
「なにすんだよ」
「湿布貼るの。こういうのは早めに対処しないと」
「やめろよ」
「やめない」
黒崎くんはその手を振り払おうとしたけど、有無を言わせず湿布を貼り、その上からそっと手を当てた。
腕の痛みと一緒に心の痛みも和らぎますように……そんな願いを込めながら。
「そこでなにしてるの」
ふたりだけの世界に突如割り込んできた声。
穏やかな空気を引き裂くようなその声にハッと我に返れば、まだ部活中のはずの律くんが教室の入り口に立っていた。