いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
そのまますとん、と空いた席に腰を下ろしたあと脱力したようにふっと笑って。
「そっか……黒崎の兄さんだったのか……」
そう呟いた。
……え?
張りつめていた空気が、急に風を送られたように流れだす。
重苦しくなるどころか律くんの周りだけ軽くなった感じさえする。
どう見ても開き直りにしかとれないその態度に、さすがのあたしも嫌悪を抱いた。
「401で会ってたことは否定しない。でも、それが浮気かって聞かれたら、答えはノーだ」
……そこまでバレても、浮気を否定するの……?
そんなふざけた言い訳が頭に来るのは黒崎くんも同じだったみたいで、律くんの胸倉をつかみにかかった。
「てめえっ、ふざけんなよっ!!証拠があって自分でも認めときながらどの口が浮気じゃねえって───」
「俺はあああっ…………!!!!」
その手に揺さぶられながらもかぶせる様に張り上げた声に、黒崎くんは口を閉ざした。