いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「……変わりだったんだよ、俺は」
「……」
「黒崎の、兄さんの……」
「……っ!?」
襟元を引っ張ったままの状態で黒崎くんの動きがとまる。
両目を見開いたまま、瞬きもせずに。
「小野先生……抜け出せねえって……。昔つき合ってた彼氏が死んだって……その過去から抜け出せねえって」
耳を傾けるあたしも同じ。
瞬きも、呼吸さえも忘れてしまいそうなほどに。
「俺が……その彼の高校生の頃にそっくりらしいんだ」
手を離し、黒崎くんがふらっと一歩後退した。
「サッカー部だったことや、髪型とか雰囲気とか性格とか……。最初は元彼が俺にそっくりだなんて世間話してて……そのうちに、彼が亡くなったことを聞かされて……俺を見るたびに彼を思い出して小野先生は辛かったんだろう。……そして、助けてくれって言われたんだ」
「たす、けて……?」
あたしの声に律くんはうなずく。