いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「教壇では一切見せなかったけど、私のせいで彼が死んだ……そう言って悔やむ小野先生は心のバランスを崩してた。
小野先生は俺といると、彼と一緒にいるような気がして落ち着ちつくって言った。だから、出来るときだけでいいから一緒にいてくれないかって……。
それは彼に似ている俺だから出来ること。誰にでも出来るわけじゃない。……なら……小野先生の力になってやりたいと思ったんだ」
言葉を選びながら丁寧に紡いでいく律くんは、時折苦しそうな表情をあたしに向けた。
それは、ひとつもウソなんて交じってない瞳。
はじめてあたしに手を差しのべてくれた時のような、優しい瞳。
「小野先生も彼もこの学校の卒業生で、301はふたりが過ごした思い出の場所らしい。
週に1、2回、俺とそこで時間を共にすることで、小野先生はもう二度と戻れない彼との時間を仮想の中で過ごしていたんだと思う」