いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



それはそうだ。


黒崎くんが苦しんだように、彼女だった人も苦しんでいないわけない。

真実を話せないまま別れを告げて、その結果、自殺してしまったなんて知ったら……。


それが、小野先生なら……。


この話はほんとうで。

律くんの背中に腕を回していた小野先生は、彼との思い出に浸っていただけ……?

律くんを好きだからじゃなくて……?



「決して俺って人間に惹かれてる訳でもなんでもない。俺の中に、亡くなった彼氏を投影していただけなんだよ。小野先生にとっての俺は、黒崎の兄さん、ただそれだけだ」



『優しさがアダになんなきゃいいけど』

いつか万葉ちゃんが言ってた言葉を思い出す。


優しい律くんは小野先生を救うために、黒崎くんのお兄さんの代わりをしていただけ?


だとしたら。



「時には泣いてる小野先生に胸を貸すことはあったけど、俺は……心まで許したつもりもないし、もちろん体の関係だってない。小野先生は……投影するあまり、俺にそれ以上を求めてきそうにもなったけど寸前で我に返ってた……」



じゃあ……。

保健室でも。


顔を近づけた小野先生は、あのあとキスしたわけじゃなかった……?


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