いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



「購買のパンもいつもより美味く感じたりして、あはっ」



太陽にも負けないような笑顔。

この笑顔が大好きだったはずなのに。


あたしはどうして……。



「あたし屋上久しぶりなんだっ。天気もいし気持ちよく食べれそうだね」


「喜んでくれてよかったー。暑いからやだって言われたらどうしようかと思った」


「えー、そんなこと言わないよ」


「そっか!」



なら、あたしはいつも通りを貫くだけ。

いつか消えてなくなるはずのこの想いを、間違っても悟られちゃダメ。


日陰に並んで座り、あたしはお弁当を、律くんは袋からパンを取り出す。



「美優のお弁当おいしそう」


「そうかな。普通のお弁当だよ?昨日の夕飯の残りとか、あとは冷凍食品も入ってるし」


「それで十分だよ。うちの母親、料理あんまり得意じゃないんだよね。だから弁当も作ってくんないし。毎日500円渡されて終わり。出費かさむのにその方がいいっつーんだよ」


「あははっ、そうなんだ。面白い」



はじめて聞くエピソードに自然と笑い声が出せたことに安心する。


大丈夫。

あたしちゃんと笑えてる。


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