いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


「じゃあいただきますっ!」



口に合うかな……。

家庭の味って、好みがあるだろうし。


ちょっと不安になりながら律くんの口元を見つめていたけど。



「うめえっ……!」



そう言いながら箸を動かし続ける仕草に、胸がじんわりと温かくなった。


素直にうれしい。

特別なものなんて何も入ってないけど、こんな風に美味しそうにお弁当を食べてもらえるなんて。


あたしもカレーパンを一口かじり、そんな律くんを隣から眺める。



律くんが今日誘ってくれたのは、目に見えない溝を埋めるためなんだよね……?


誤解だと分かっても気まずさは否めなくて。

お互い口にはしないけど、あの日以来あたし達の間にはどこか距離ができていた。


律くんはもちろんのこと。

あたしだって自分の気持ちに戸惑って、律くんとどう接していいのか分からないんだ。


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