いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
黒崎くんは、お兄さんが小野先生に見捨てられたと言っていたけど、小野先生の方は少なくともそんなつもりはなかったんだろう。
律くんに変わりを求めるくらい、お兄さんを忘れられなかったんだから。
でも黒崎くんにしてみれば、律くんの浮気という想い違いの上に、小野先生のお兄さんへの気持ちまで知って。
小野先生を悪人にすることで自分の罪に蓋をしてきたはずが、いい意味での裏切りに、どうしていいかわからない黒崎くんの葛藤もわかる。
だって……ますます自分を追い詰めることになるんだろうから。
自分がちゃんとお兄さんに見たままのことを話していれば……って。
そう思い悩むあまり、ほんとうに病気になったのかもしれないと思うと、気が気じゃなかった。
連絡先も知らないし、正しい情報がわからない……。
「聞いた?黒崎あと持って半年の命らしいぜ」
「マジ!?」
物騒なことを大声で話しながら男子が教室に入ってくる。
嫌でも耳に入るその音量に、意識はそっちに持って行かれた。
「ちょっと!変なこと言うのやめてよね!!」
「ほんとほんと、サイテー」
黒崎くんに肩入れしている女子が即座に反論する。
「なんだよ、オマエらこそちょっと前までは黒崎に見向きもしなかったくせに。玉の輿でも狙おうって魂胆か」
「ち、ちがうわよっ!あんたたちこそ僻んでんじゃないの!?」
黒崎くんのことが気に食わない男子と、黒崎くんを支持する女子で、教室内は一触即発だ。