いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


ドキドキしながらインターホンを押したけど、なかなか応答がなかった。


……誰もいないのかな。

留守だったらこのプリントどうしよう。


胸に抱えた封筒の重さは結構なもの。

こんなに溜めこまないで先生がもっと早く持って行けばよかったのに。


……そうか。理事長の家だから行きにくいのかも。

なんて納得しながら、こんな大きな門の前に置いて帰るのもどうかと思い、悩んでいると。



「…………はい」



低い声が機械越しに伝わった。


黒崎くんの声だ!



「か、柏木ですっ……」


「……」


「あの、同じクラスの……」


「…………知ってる」



わからないのかと思って付け足すと、タメ息交じりにそう呟かれた。

思えば名前で呼んでくれたことがないから、名字さえも知られてないのかと思った。



「用があって来たのっ……」


「……俺はない。じゃ、」


「ああっ、まってまって!!先生からプリント預かってて……」


「……」


「これ渡さないと帰れない……っ!」



……お願いっ!


必死になってインターホンに向かって捲し立てると。



ブチッ。

そんな耳につくノイズ音を残したあと、黒崎くんの声は聞こえなくなった。



切られた!?

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