いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「アンタが白鳥に街に置き去りにされた日のこと」
「えっ?」
置き去りって……。
ああ。
映画を見に行って、律くんがサッカー部に呼ばれたと言ってどこかへ行った日のことか。
「白鳥は、本当にサッカー部に呼ばれたのか?」
「……ううん、ちがった」
「……だろうな。あの日は兄さんの命日だった」
「え……」
それを聞いて、電話の相手は小野先生からだったんだと確信する。
そして理由も分かった。
命日という日が小野先生を余計に苦しめて、律くんに助けを求めたのかもしれない。
そんな小野先生が放っておけなくて、律くんは……。
「そ、」
短く呟いた黒崎くんも、その理由が分かったみたい。
やっぱりという表情の裏で、小野先生を恨むことから少しだけ解き放たれたようにも見える。
「あ!じゃあ、あのお花は……」
黒崎くんがお花を持っていたことを思いだして、もしかしたらと思う。
「花?……ああ、あれ。兄さんの墓参りに行く途中だった」
やっぱり。
彼女へのプレゼントかと思っていたお花は……。
あのときは別のことに意識がいっていたせいで分からなかったけど、思い返せばそんなに華やかな花じゃなかったかもしれない。