いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


「俺はただ病院の立派な跡取りになればいいんだっつう話。学校サボろうがテストが最下位だろうが関係ねえんだよ」



口調は強がっていたし、開き直ってもいた。


でも。


……悔しそうだった。

……悲しそうだった。


そんなの当たり前だよ。

必死に送ったSOSにすら気づいてもらえず、黒崎くんの気持ちは八方ふさがりなんだから。



「小野美鈴にとって白鳥が兄さんの変わりだったなら……俺は父さんにとって、どうせ兄さんの変わりなんだ」



……黒崎くん。

そんな風に思って今まで生きてきたの?


お兄さんが亡くなってから変わったって万葉ちゃんが言ってた。


お兄さんにほんとのことを言えなかったことで苦しんでる上に。

病院の跡取りになった黒崎くんは、お兄さんの変わりだと思う程のストレスを抱えて。



「兄さんて壁は高くて……俺なんかが超えられるわけねえんだよ……」



あたしが好きになった黒崎くんは。


……こんなにも心を痛めていた。

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