いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「そんな顔してると、またキスするよ?」
もたれかかっていた背をあげ、グッと黒崎くんが身を乗り出してくる。
あたし今どんな顔してるの……?
きっと、すごく醜い顔してるんだろうな。
目を伏せて、言われた言葉に想いを巡らせれば。
キスなんて黒崎くんにとっては握手するくらい簡単なことなんだよね。
意味なんて、まったくない。
「……いいよ、しても」
だったらあたしだって、その手を取ることなんて簡単。
今はその手を握れるのなら自分からだって掴みに行きたい。
「したいなら、すればいいよ……」
そう呟いてから顔をあげると。
「……っ」
ほんの少しだけ目を開いて驚く顔がそこにはあった。
「……んだよ……」
「……言ってきたのは黒崎くんでしょ」
それで黒崎くんとまた関わりをもてるなら。
キスでも握手でも……あたしはなんだっていいよ。
大切にしてくれる彼氏がいる。
この想いを口にしたらいけない。
わかってるくせに、やめられない。
あたし……なにやってるんだろう。
もうやだ。
律くんと付き合っていながら、黒崎くんに胸を焦がす自分も。
黒崎くんの前で素直になれない自分も。
この想いごと、いっそ消えてくれたらいいのに。