いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
岸本先生はそう言って苦笑いしたあと、少し声を落とした。
「知ってると思うが、親父さんがここの理事長だろう?下手に注意もできないし、黒崎が真面目にやってくれないと先生たちが困るんだよ」
「……え?」
……先生たちが困る?
「それに加えて無愛想だろ、黒崎は。なにを考えているのか分からないし、どう扱っていいか神経ばっかり使ってなあ」
眉根を下げて困って見せる岸本先生に、急速に募る嫌悪感。
…………そんなの違う。
間違ってるよっ……!
「あの、」
沸々と湧き上がってきた想いは止められなかった。
「ん?なんだ?」
「黒崎くんは、理事長の息子さんかもしれないですけど、明應高校の生徒のひとりです」
「……お、おう」
「先生たちおかしいですよ。どうして特別扱いするんですか?」
大人には大人の事情があるかもしれないけど。
親がどんなにすごい人だって、黒崎くんは普通の高校生。
みんなと平等に学校生活を送る権利はあるはず。
「だからクラスの人達にも敬遠されて、それじゃあ学校に来たって窮屈に決まってます」