いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



その視線はあたしに戻っていて、同調したような笑顔を見せてくれる。

それはいつもみたいにキラキラしたものじゃなく、ちょっと無理があるように見えた。


やっぱり……今のは見られてたのかな。

もしかして、岸本先生とのやり取りから見られてた……?


気まずさを覚えながらも、笑顔で返す。



「一番前の席だもんね」



距離を置いていても、日常会話すらしないわけじゃない。

万葉ちゃんにはバレてたけど、普段からベタベタしてるわけでもないし周りにこの変化は気づかれてないはず。



「でも一番前の席って、案外死角になって見えないらしいぜ?美優の席こそ教壇からよく見えるみたい」


「えっ、そうなの?」



じゃあ油断できないなぁ。

……あ。黒崎くんが小野先生に目ざとく注意されていたのもそのせいなのかな。


……。


律くんと話していても、どこまでも黒崎くんがつきまとう心の中に、諦めにも似たタメ息が零れた。


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