いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



貼られていたのは、黒崎くんの名前が書かれたテストの答案用紙。

それは国語らしく、見事にバツが並んだ0点のもの……。




「黒崎の成績ってオール5なんだろ?」


「ああ、1年の時の担任が黒崎を見習えとか言ってたしそれは誰もが知ってる事実だろ?なのに0点ってなんだよ」


「つまりはあれか、理事長の息子はなんでもありってことか」


「サボっても注意されねえし、よく考えてみても授業態度加味すりゃオール5なんておかしいよな」


「テスト中もすぐ机に突っ伏してるからどんだけ問題解くの早いんだよって思ってたけど、こういうことだったのか」



たまっていた疑問を次々に吐き出す彼らは、共有の想いを持っていた仲間の意見と照らし合わせ更にヒートアップする。

それは耳を塞ぎたい内容の数々で。



「……っ、」



まるで、自分の悪口を言われているように心が痛くなる。


教室中で黒崎くん批判が続く中、上向きな声が耳に届いた。



「美優、こんなの間に受けないの!どうせ黒崎を嫌いなヤツが陥れてんだから」



こういうウワサにいちいち反応しない万葉ちゃんは、サラッと言ってうつむくあたしの肩に手を乗せた。

律くんとの別れを選んだあたしを理解してくれて、褒めてまでくれた。

今、あたしの唯一の味方。


だけど、その温かい手に浸る余裕はなかった。

だってあたしは……これが間違いじゃないって知ってるから。

この答案用紙は、きっと本物。


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