いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



ようやく放った黒崎くんの言葉は完全にクラスメイト達を敵に回すものだった。

低く、冷たく。



「弁解なんてしねえ。

羨ましかったら……理事長の息子にでもなってみろよ」



挑発めいた言葉に、誰もが息をのむ。

それは相当なパンチ力を持ったようで、詰め寄っていた男子たちは呆気にとられたように黒崎くんの顔を見つめていた。


あたしも、同じ……だけど。

あたしには、まるで自分で自分の傷をえぐっているように見えた。


理事長の息子……大病院の跡取り……。


その華々しい肩書の奥にある、深くて苦しいその闇と闘っている彼を知っているから。


黒崎くん……。

胸の傷をそんな風にさらけ出さないで。

自分を追い詰めないで。



だけど、手を延ばすことが出来るはずもなく。

ただなすすべもなくその横顔を見つめるだけの無力な自分が悔しくて。

睨みつけるように自分の席に座っている黒崎くんをただ見つめて。



あたしは唇を、きつく噛んだ。


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