いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



「な、なんだよこれ」


「ひでえな、普通ここまでやるか!?」



黒崎くんの姿が消えると、みんな廊下にワッと集まりその惨劇に眉をひそめる。

泣きだしている女子もいる。


騒然とする教室内で、まだ事の状況が把握できていない中、



「ちょっと、あんた黒崎のなんなわけ?」



数人の女子に囲まれた。

目元を強調するように黒で縁どられた彼女達のアイラインが怖さを倍増させる。



「ほんとに律から黒崎に乗り換えたの?」


「はっ、呆れちゃうよね」


「大人しそうな顔して男好きとか最低」



そういえば、久しぶりに嫌味を聞いた気がする。

どうしてだろう……その意味を考えて思い当たることと言えば。


『やっと矛先が変わったっつうのに……』


…………。


黒崎くんがなにをされても黙っていたのは。

もしかして、イジメの矛先をあたしから自分へ向けるため……?



「……っ、どいてっ」



彼女達を押し退け、あたしは弾かれたように教室を飛び出した。

それは彼女達から逃げたんじゃなくて、黒崎くんを追いかけたかったあたしの本能───。

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