いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
こういう時に逃げ込むのは屋上だろうと推測したあたしの読みは当たっていた。
扉を開けた瞬間、今日も激しく照りつける太陽のもと、フェンスに背をつける黒崎くんを見つけた。
錆びついたドアの音によってあたしの姿を確認するとサッと顔色を変え、逃げるように左へと足を進める。
だけど視線を動かせば一望できるような狭い屋上では、そんなの抵抗にすらならず。
「邪魔すんなよっ」
追いかけたあたしを煙たそうな目と声で追い払う。
今のあたしにはそんなの怯むに及ばない。
誰がここまであたしを強くしたと思ってるの?
「なんであんなことしたのっ……」
下は相変わらず大騒ぎだろう。
しかも登校時。散らばるガラスは多くの生徒の妨げになっているはず。
「あぁ?ムシャクシャしたんだよっ」
「ウソだよそんなの」
もし廊下に人がいたら誰かをガラスの海に巻き込む可能性もあった。
一度廊下に出たのはそこに人がいないのを確認するためだったんでしょ?
つまり発作的、というよりは確信犯的行動。
なにがあってもお父さんの耳にまで届かない黒崎くんの不埒な行為を、確実に伝える方法……。
さっきの行動は、黒崎くんの心の叫びに聞こえた。
こうでもしないと現状がお父さんに伝わらないと悟った黒崎くんなりの最大のSOS……。