いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



「……もう、自分を許してあげて……」



苦しみに苦しみを重ねた彼の心の叫びは、届いてほしい人に届かない。

お兄さんに真実を話せなかったことから始まったすべての苦悩は、きっと限界まできている。



「これ以上自分を傷つけないでよっ……」



黒崎くんの肩がピクリと動いた。



「……アンタに何がわかんだよ」



低い声で嘲笑するような口調には"なにも知らないくせに"という苛立ちが含まれているのは理解するけど。

あたしだって苛立ってる。



「わからないよっ!」


「……」


「分かりたくても分からないんだもんっ!」



黒崎くんは心の中を見せてくれないから。

意地ばっかり張って、どうしたいのかを全然言わない。

そんなの……わかるわけないじゃん!



「お兄さんに後ろめたい気持ちを持って、有能だったお兄さんを超えられないっていじけて、お父さんに正面からぶつかれなくて。そうやって一生ひねくれてばいいよっ!」


「……あぁっ!?」



目を見開いた黒崎くんに怒りの火がつく。

でもあたしはやめなかった。



「気付いてもらえないんなら……気付いて欲しいなら……黒崎くんから声をあげてみればいいじゃんっ……」


「……」


「お兄さんのことだって……ほんとは壁なんてどこにもないんだよ!壁は……黒崎くんが自分で作ったんだよ……っ!!」


「……っ、」


「……それでも壁があると思うなら、そんな壁なんて壊しちゃえばいいのにっ。……のぼる必要なんてないんだよ……越えなくていいっ……必要なのは、壊す勇気……っ……」


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