いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「柊哉くん!」
背後から叫ばれた声に、肩がビクッと震えた。
何年振ぶりに聞くかもわからないその呼び方に。
痛みと懐かしさが交差する胸を抱えながら振り返れば、今にも泣き出しそうな目で俺を見つめる……小野美鈴の姿があった。
「……なんだよ」
言って、すぐに理解した。
ああ、そうか。
俺の犯した事件は、あっという間に校内中に広まって。
聞きつけた小野美鈴が俺を捕まえにでも来たんだろう。
そんなことが出来るのは、この高校で小野美鈴だけだ。
自分だけは俺に意見出来るという態度にうんざりしつつ、フェンスに視線を戻す。
白鳥と小野美鈴の逢瀬を見たときは、久しぶりに自分の中で燃え上がるような感情を覚えた。
ずっと抱えていた後悔にも勝る、憎悪。
兄さんを死に追いやった"共犯"の俺は、小野美鈴を憎み続けることで自分の罪から目を背けていた。
だから、小野美鈴が悪い女であってくれるほど、俺は自分を保てた。
反面、こんな女と付き合っていた兄さんが不憫で……。
どうしていいか分からない感情が俺を卑屈にさせた。
でも、そんな小野美鈴も兄さんの死に苦しんでいたなんて聞かされて。
そんなこと聞かされて……今までの俺の想いはどうなるんだよっ……。