いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



気温がグングン上がっていく初夏の屋上で、冷たい俺の手に重ねる手も、同じように冷たく。

それでも。

憎み続けていた彼女も結局、同じ傷を抱えていたんだな……なんて思えるほど俺は大人じゃない。



「……なにを今更っ……」



自分のことを棚に上げて彼女に強い口調をぶつけることに苛立ちながら、その手を振り払う。



兄さんが死んだあと、葬式にも顔を見せなかった美鈴とは会う機会もなく文句の一つも言えなかった。

ここで再会してからも不用意に会話を交わさず、お互いが探り合うように距離を置いて……。

一度だけ放課後の廊下で対峙した時には、軽くジャブを打ってしまったが。



「そうよね……ほんとに今更……」



そう呟きながら自嘲するように口元に笑みを浮かべた直後、それを振り払うように一度目を閉じて。

次に開いたその目には、哀しみが滲んでいた。



「私のことはどれだけ憎んでも構わない。だけど、自分を追い詰めるのはもうやめにしよう?」


「……」



"自分をもう、許してあげて……っ……"

似たようなことを柏木に言われたばかりだ。


……胸が、張り裂けそうだった。


ただ強くいようと思っているだけなのに、柏木や美鈴には、俺は自分を傷つけ苦しめているように見えてるのか……?

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