いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
それを見たばっかりに、どれだけ俺が苦しんだかっ……。
美鈴は一瞬顔を強張らせたあと、目を伏せた。
「……お金を渡されたのは事実よ。でも、お金と引き換えに彼を手放すなんてことは考えられなかった。ただ……彼の将来を思えば……なんの力もない私が彼と一緒になれないことくらい分かっていたもの……」
「……っ……」
「だから、涼成が亡くなったって知った時はもうっ、悲しくて悔しくて……」
「……」
頬に流れ落ちる滴を前に、俺はなにも言えなくなる。
金を渡したところは見ていたが、受け取ったところは見ていない。
直後に兄さんと別れたことが、何よりの証拠だと思っていただけ……。
俺は……一番大事な所を見落としていた……?
「それはお父様も同じなのよ。お父様は、涼成の写真を抱きながら何度も後悔の涙を流していたの」
「……っ、んなのウソに決まってんだろ!」
「ほんとよ!」
「知ってんだろ!?父さんは……兄さんが弱いヤツだと罵って、自殺を事故とまで隠蔽しやがって──」
「涼成がそう望んだのよっ……!!!」
俺の言葉を遮り、空気を切り裂くように美鈴が叫び散らすと、フェンスの上で羽を休めていた鳥達がパタパタと飛び去った。
つられるようにそれを目で追って……さっきよりも静まり返った屋上に声を落とす。
「兄さんが……望んだ……?」