いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「……涼成が残した日記に、そう書かれていたの」
「日記……」
口にして、思い出す青い表紙の日記。
それは……俺が途中まで読んだあの日記のことなんだろうか。
「私は涼成が亡くなった後に日記の存在を知った。病院内の派閥や軋轢に苦しんでる様子が書かれていた。優しくて、争い事が大嫌いな人だったから……」
……ああ、兄さんは優しくて……いつも太陽みたいに笑ってる人だった。
「その重圧になんとか耐えていたとき……私まで失って……」
自分を責めるように、声を震わせる。
「そんな涼成が最後に思ったのは、あなたのことだった」
美鈴は俺を真っ直ぐに見た。
「病院の跡継ぎが自殺したなんてことが世間に知られたら、この病院に傷がついてしまう。自分が死んだら、あとを継ぐのはあなた。…そんなあなたに、傷のついた病院を継がせられない」
「……え」
「だから事故ということにしてほしいと……傷ひとつつけずに柊哉に病院を渡してほしいと……その日記の最後に綴られていたの。その意志を……お父様が汲んでくださったのよ……」
体中がスッと冷たくなっていく。
「お父様も苦渋の決断だったと思う。でも、涼成の意志を尊重してくれたのは、涼成のことも柊哉くんのことも、どちらも同じように愛していたからよ」
「……」