いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



「私は涼成と別れてすぐイギリスに行ったの。そして戻ってくるとお父様から連絡をもらったわ」


「……」


「もう涼成の死から1年経っていたのに、お父様は泣くの、涼成の写真を抱いて、私の前で」



……ウソだろ。

あの父さんが泣いているところなんて想像もつかない。



「お父様も後悔していた。まさかこんなことになるなんて、誰も思わなかった……私も、お父様も……。そして、あなたもでしょ?」



……そうだ。

そんなことが分かっていたら、ちゃんと言ってた。

彼女が去ったのは、父さんに頼まれたからだと。



「私がここに赴任したのは、お父様にお願いされたから。大学卒業時に教員免許を取得していた私に、明應高校の教師になってほしいと言ってきた……」


「……父さんが?」



そんなまさか。

就職先の斡旋は、兄さんと別れる条件のひとつだと思っていたのに。

美鈴の意志だと思っていたのに。



「今更こんなことをお願いできる立場じゃないのは分かってる、そう言って……お父様は私の前で頭を下げたの」



胸の前で手をギュッと握りしめながら訴えるその姿にウソは見えない。


でも、信じられない。

あの父さんが頭を下げたなんて。

それは一体なんのために……。

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