いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「塾に通わせているのも、どこにも本音をぶつけられないあなたを思ってのことなの」
「……塾……」
「あの先生へなら、思ったことをもなんでも口に出来るだろうって」
「……」
ハゲのおっさんは、お喋りでお節介で正直うざい。
でも、塾に行くのは嫌じゃなかった。
唯一軽口を叩ける大人で、あの人柄に癒されていたのは事実……。
それも、父さんの計算のうちだったのか?
「……っ、」
喉の奥から声にならない声が漏れそうになって、思わず手で覆った。
「お父様はお父様なりの方法で、ずっとあなたを見守ってきたの。ただ、不器用すぎてそれが伝えられなかっただけ。お父様もああいう性格だから、意地を張ってしまったんだと思うの」
……ざけんなよっ……。
……なんだっつうんだよ……それ……。
でも。
「……ううっ……う、ああっ……」
込み上げてくるものは抑えられなくて。
全身の力が抜け、俺はそのまま地面に膝をつく。
父さんが俺を知りたいと思ってくれていた。
俺を、気に掛けていてくれた……。