いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
迷っている暇はない。
「こっち来てくれ!」
白鳥の手をつかみ圧迫する位置に固定させると、そのまま数回一緒に押し、これを続けるよう指示を出す。
「こんな感じでいいのかっ!?」
「ああ続けてくれ!」
その間に俺はAEDを開き、二つのパットをそれぞれ右胸上と左胸下にセットする。
「一旦離れろ!」
白鳥に手を止めさせ奥に押しやると、周りで見ていたクラスメイトたちも一歩後退する。
心音を解析しているアナウンスが流れる。
ショックが必要ない場合、その指示は出ない。
誰でも指示に従えば使えるように作られている。
『ショックが必要です』
ショックを与える指示が流れた。
……落ち着け。
目を閉じて、大きく息を吐いた。
あの海で。
美鈴と会ったあの海で。
医師を志すきっかけとなったあの海で。
出くわしたのはこんな場面だった。
当時、AEDはまだあまり知られてはいなかったが、その海水浴場には設置されていて。
兄さんはAEDを使い、落ち着いて人命救助を行ったんだ。
大丈夫。
俺なら出来る。
そして息を吸い込んでからカッと目を見開くと、俺は叫んだ。
「絶対触るなよ!」
それを聞いてさらに周りが一歩後退したのを確認すると、ショックボタンを押した。
そしてすぐにまた胸骨圧迫を再開。
「戻ってこいっ……!」
それから……。
何度かショックを与えつつ、白鳥と交互に圧迫を繰り返していると、わずかに手に反応が見えた。